Sanson Terrace

Stay
長野県南佐久郡佐久穂町

田舎の美しい風景との出会い

岩下大悟さんの空間製作のルーツは、大学生の時にバイクに乗って日本を一周したことからはじまる。行く先々で目にした地方の風景に心うたれ、田舎の美しさに感動した。そして美しい風景を生み出しているのはそこに暮らす人々の日々の営みであることに気づいた。そんな滋味あふれる美しい風景を、自分も作っていきたいと思った。

26歳の頃、ずっと惹きつけられていたフィンランドを旅した。家族で所有する小さなコテージで、夏や週末を過ごす習慣があるフィンランド。
森を歩き、湖を眺め、サウナに入り、家族と食事する。そこにある自然の中で、ただ静かに時間を過ごす。そんな豊かな時の流れと、そこにある風景。身の回り全てのことは、その土地と結び付いていると感じる日々の生活。岩下さんの空間づくりには、目と肌で感じる「時をゆったりと楽しむスピリット」に溢れている。

いずれ地元で生活しようと思っていた岩下さんは、大学卒業後に佐久に帰郷。
地元で会社勤めをしていた頃に、仲間と山小屋を建ててみたがそのままになっていたことに気づく。フィンランドで過ごした貴重な時間は「あの小屋を何とかしよう!」と決心させた。これが『山村テラス』1作目となる。

山が近くて川が流れ、人と人の程よい距離感のある佐久穂町。
この町で試行錯誤を重ねながら、「ここで暮らしたい」と思うような宿泊施設を、創作している。土地との結びつきを大事にしながら、今は4作目を製作中だ。 

 

 

 

窓から見える風景、心動かされる空間

八千穂高原、メルヘン街道の斜面に建つ『ヨクサルの小屋』(3作目)
小説『ムーミン』に出てくる、自由人ヨクサル、をイメージした空間だそうだ。
誰にもじゃまされず、自由に過ごせる時間。なんだかすっぽり包み込まれるような安心感がある室内。窓から入る優しい光の中で本を読んだらきっと幸せだ。

岩下さんのデザインする空間は、気持ちを落ち着かせてくれる。
そこにある風景を尊重した、動線とスペース。過ごし方や時間の流れ方を頭の中でイメージしながら、こつこつと作りあげていく。自分自身がそこで過ごすことを思い描いてひとつひとつ手作りする。「居心地がいいので籠もる人が多いです」と、岩下さん。

滞在する人が「あーこんな生き方、こんな人生もあるんだな、と空間から感じてもらえたら嬉しい」と、生き生きした笑顔だ。

岩下さんはいつか公園を造りたいと考えている。
山や水に囲まれ、誰もがそれぞれ居心地よく過ごせる森。ツリーハウスやサウナが、自然な風景に溶け込むような場所。その土地と繋がることができる空間。

子供の時は勉強はできたけれど、自分の軸や、本当に好きなものが何なのかわからなくて悩んだ事もあったと言う岩下さん。自分を見つめていくうちに、だんだん自分の好きなもの、大事なものがはっきり見えてきたようだ。

「作った空間に自分たち自身が満足し、宿泊してくれたお客さんも満足すること。そして自分たちが活動を続けていく中で、結果として地域が少しずつ良くなっていくこと。そんな循環の中で活動できれば。」

それをごく自然なかたちで表していく、魅力溢れるクリエイターだ。

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