せわしない時代だからこそ、
じっくりと手間ひまかけたフレンチが食べたい
『創作レストラン・マルシェ』は、佐久市野沢で ”長寿の里” として有名な「ピンコロ地蔵」から歩いて5分の静かな町並みにある。目印は明るいグリーン色のドア。
1999年開店以来「正統派フレンチが食べれるお店」として、地元のファミリーや別荘に滞在する人達に愛されてきた。誰もが楽しめるようにと、今はパスタやカレーも揃う「フレンチがベースの洋食レストラン」として、町の皆んなに慕われ続けている。
オーナーシェフの原正利さんは、20代のころ一度思い切って海外へ出たことがある。ロンドンとニューヨークで食文化を吸収した後、故郷の佐久に戻り店を開いた。皆んなに『マルシェ』と呼ばれ、親しまれるレストラン。原さんご夫婦、息子さんとパートナー、4名のチームワークが光る、とてもアットホームな店だ。
原さんは料理に手間ひまかけることを惜しまない人だ。
「昔ながらのフレンチがやっぱり好きだから」と、コツコツじっくり時間をかけてスネや骨髄を使ったフォンドヴォーを煮込む。寒い季節はやっぱり「牛タンや、頰肉の赤ワイン煮込み」が人気メニューだそう。
彼の作る、「バターにニンニクを焦がしてフォンドヴォーを加えたソース」は絶品!この香ばしいソースを食べたいために、訪れるリピーターも多いそうだ。
『マルシェ』は毎日デザートも手作りし、クリームには植物性のものは一切加えない。
長期に渡り大人気の「フロマージュ・ブラン」は、今は亡き料理仲間の大切なレシピだ。クリームをたっぷり使った、レアチーズケーキとフランボワーズのソースがぴったりと合う。このレシピを引き継いでから、15年もの間作り続けている、素敵なストーリーがある。「ファンがいるのでやっぱり作らずにはいられない」と笑顔。
なんでも自分でやる器用な原さん。自宅で「信州オレイン豚の脚」で作った生ハムを熟成させ、『八千穂漁業』の「信州サーモン」をスモークする。とにかく根っからの料理好き、エネルギー溢れる職人さんだ。
作り手の顔が近くで見れる、スローフード
そんな正統派フレンチの基本を守りつつも、食への考え方は安全重視だ。
「家庭で子供にアレルギーがあることが分ってから、自宅でもお店でも、食の安心安全を一番に考えるようになった」。
肉類は抗菌性物質を使わず、飼料は収穫後農薬や遺伝子組み換え食品を一切使わないものを選ぶ。野菜と米は、知り合いの有機農家から、無農薬なものだけを仕入れている。なるべく近所の顔の見えるところから、安全でローカルな新鮮素材を使うことを徹底している店だ。
時間ができたら、家族で息子さんの作るつまみを食べながらワインを飲むのが楽しみ。「やっぱり家族が一番大事」と顔がほころぶ。フレンチワインが大好きな原さんは、記念日にはシャンパンを準備したりする。なんとも家族思いのハートのあるシェフだ。
そんなシェフの夢は「ただスーパーで買って食べる食生活」ではなく、「その地域の風土に合った季節の食材が、1年を通して自然にテーブルを賑わすような環境」。
地元の生産者が丁寧に育てた食材にきちんと対価を払う。
その土地に適した食材を使い、ゆっくり料理して食ベる。
郷土を大切にする「スローフード」があたりまえとなる毎日。
原さんは、地に根を下ろした生活ができる、そんな佐久の未来を心に描いている。