ジャンボン・ド・ ヒメキ

Food producer
小県郡長和町大門姫木

夏は涼しく、冬は零下、大自然の中のアトリエ

『メゾン・デュ・ジャンボン・ド・ヒメキ』は、長野県白樺湖の北側に位置する、標高1500メートルの姫木平にある。スペインのハモンセラーノの作り方を基本とし、シェフたちに絶賛される本物のナチュラルハムを造るアトリエだ。

「標高1500mの大自然の環境が作る、ナチュラルハムのアトリエ」。

ウェブサイトで初めてこの見出しを読んだ時、「厳しい寒さの冬山で、黙々と豚の脚に挑む、ハイジの本に出てきそうな人物?」を勝手に思い描いていた。本当のところ、オーナーの藤原伸彦さんは、都会生まれのかなりの食通。ワイン好きのとても素敵な職人さんだ。

藤原さんは、子供の頃から食いしん坊だったそうだ。「家庭科の授業で、周りの女子をリードして味噌汁のだしをとっていた」と大笑い。家族が美味しいもの好きだったからか、小さい時から食にこだわりがあった。

もともと関西出身の藤原さん。10歳の時に家族で長野県姫木平に越してきた。
美味しい料理を振るまうペンションを経営する両親の影響で、自然に厨房に入るようになった。その流れから、フランス料理の世界へと進む。2つ星レストランで研修後、当時大阪で No.1 のグランメゾンで経験を積んだ。その後もずっと食の世界に身を置き、たくさんのレストランを手がけて来たプロフェッショナルだ。

そんな経歴を持つフレンチシェフだが。なぜか巡りめぐって様々な出会いに背中を押され、気付いたらいつからかナチュラルハムを作る職人へと一変していた。

「出会いや人との繋がりは、なんだか不思議」と、笑顔の藤原さん。

ある日、とても美味しい生ハムを研究しながら作っている人物と出会った。その出会いから一気に、大好きだった生ハムの魅力にどんどん引き寄せられ、自己流に少しずつ作り始めたと言う。

元々、とことんやる性格。自分が満足できるクオリティーにならなければ作る意味がない。最高のものにできなければ、作らなくていいと考える完璧主義。「やっぱり冬山で黙々と豚の脚に挑む人?」と思いきや、実は茶目っ気のある楽しい人柄。あくまでも自然でソフトに、世界に誇れるハモンセラーノを追求し続けている。

「今の自分は出会いや縁、人生の流れ、全てがちょうど上手くリンクされた結果」と言う。試行錯誤を繰りかえすうちに、藤原さんは『ジャンボン・ド・ヒメキ』にたどり着いた。

努力の賜物と、幸運の持ち主。両方のバランスがうまく重なった人生。今ではハム造りが本職となり、年間200本もの「ジャンボン」と「パレタ」を造るアトリエを構える。

最近では、自分のレシピを「成り行きハム工法」と呼び、友人と笑い合うそうだ。
人との縁や繋がりで出来上がった、最高に幸せなナチュラルハムだ。

 

 

『ジャンボン・ド・ヒメキ』の、美味しさの秘訣

生ハム人気は途絶える事なく続き、今では全国に33工房ほどあるらしい。
それでも、標高1500メートルの爽やかな環境にある工房は、日本中探してもここだけだ。じっくりと自然の力で熟成させるナチュラルハム。姫木平のシャキッとした空気は、生ハム造りにとても合っているそう。

『ジャンボン・ド・ヒメキ』は信州で育つバークシャー豚だけを使う。オーストラリアのデボラ湖でとれる、まろやかなレイクソルトで塩漬けにしたあと、友人の杜氏が譲ってくれた、酒蔵の「麹菌」をまぶして、長期熟成させる。「麹菌」による発酵と熟成でアミノ酸の旨味が出て、そこからナッツのような香りと深い味わいが生まれるそうだ。

ショップではなかなか手に入りにくい、藤原さんのナチュラルハム。お勧めは11月下旬〜2月末に開催されるワークショップに参加し、自分のハムをつくってみる事だ。血抜きや、塩の揉み込みを実際に体験してから、いずれ自宅に届くナチュラルハムの原木は感動もの。こんなに楽しい体験はなかなかできない。

「この地域の家庭で、自然に食卓に出てくるような、 ナチュラルハムが地元に根付いた食文化の一部になってほしい」と、藤原さん。

世界中に知ってもらい、「姫木 Himeki」が世界の誇る有名生ハム産地のひとつとして、パルマやアンダルシア地方と肩を並べる日はもうすぐだ。

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