Le Carré

Restaurant
長野県佐久市

心地いい、非日常的なテーブル

のどかな田園風景が広がる佐久市。小海線の線路に沿って車で走ると、北中込駅の近くに「フランス料理」と書かれた大きなサインがある。

えっ、こんなところにフレンチ?と思い階段を上がり店に入ると、すっと落ち着く静かな空間が現れる。カウンターとテーブルで14席ほどの、誰でもさらっと入って食事ができる優しい雰囲気のある店だ。

飾らない楽しい人柄の、大北正芳さんと綾さん。
オーナシェフ夫妻は、長期に渡り海外のフランス料理店に務めていた。モントリオール(カナダ)とリヨン(フランス)で、何年も一緒に働いてきただけあり、ぴったりと呼吸の合ったふたり。ふたりの動きには、ほどよいリズム感があり、周りにいると心地よくくつろげる。

綾さんの故郷、佐久市で店を出すことにしたのは2016年。
前職では厨房にいて、お客さんの料理への反応や表情が見れないのをいつも残念に思っていた。自分たちの店を立ち上げるにあたり、オープンキッチンでカウンター席があり、お客さん全員の顔が見えるレストランを思い描いた。

お皿もカトラリーもセンスよく選ばれ、ワイングラスもきちんと磨かれている。
でも堅苦しさは一切ない「非日常的な空間」。やっぱりフランスのワインが大好きと、いつも80本ほど取り揃えている。
レストランで食事をする楽しさを再確認させてくれる、
いつもの自分のままで、本物のフランス料理が食べれる店だ。

 

 

 

「イメージを植え付けない」フランス料理店

一言で言えば、『ル・カレ』は「”まっさら”なフランス料理のレストラン」だと思う。
「イメージを植えつけないようにしている」と、大北さん夫妻。

フランス料理に対する先入観を持たずに気楽に来て欲しい思いから、押しつけ感が全くない。「お客さんが自分で『ル・カレ』の店と料理を自由に解釈してもらう」、それがいちばん嬉しいそうだ。

オープンから5年間、ずっと作っているメニューがある。
3日間かけて仕込んだ『信州サーモンのポアレ 焦がしバターソース』。
皮をパリッと焼いて中はしっとり。エシャロットとパセリの香る焦がしバターが、魚と野菜の美味しさとほどよくまざり合う。魚の皮好きにもたまらない逸品だ。

『ムース オ ショコラ カカオ豆のヌガティーヌ添え』は、コクと深みのあるチョコレートムースとカシスのほのかな酸味がぴったりあう。口の中でとろけるムースと、カリッとした歯ごたえにカカオの苦味が広がるヌガティーヌ。食感のバランスが素晴らしいデザートだ。

広島県出身の正芳さん。『瀬戸内レモンのクレームブリュレ』には、馴染み深い「瀬戸内レモン」を使い、料理はクラシックフレンチの基本を大切にしながらも、様々な食材を使う楽しさを大事にしている。リヨンの郷土料理に使われる、牛や豚の内臓も美味しくメニューに取り入れている。

パンも毎日自分たちで焼く。バゲットより太いタイプの「フルート」は、皮はパリッとし、中は少しもっちりしている。スープに浸したり、ソースをつけるととても美味しい。

色々聞いてみると本当にこだわった料理を作っているのだけれど、そんなことは全く前に出さず、あくまでも自然に美味しい料理が出てくる魅力溢れるレストランだ。
日本人がフランス料理に対して抱くイメージは、とても幅広い。

カフェやブラスリーから、3つ星レストランまで、フレンチと言っても出す料理や店のタイプによって千差万別だ。国内に何千店もあるほど、愛されるフランス食文化なのに、なんとなくスッと食べに行きにくいと思う人もまだ多い。
だからこそ「いつもはお醤油とソースが置いてある店にしか行かない人にも、ぜひ食べに来て欲しい」。「ごく普通の人にフランス料理ってこんな美味しさなんだ、と発見してもらいたい」と、笑顔の綾さん。

カウンター席でオーナーシェフと気楽に話しながら食事ができる『ル・カレ』。
一人で行っても居心地よくフレンチが楽しめる。お店の特徴を聞くと「いつ来ても僕たちがいるのが自慢」と、笑う正芳さん。

あれこれ一切言わない、さらっと行けるフランス料理店。
仲のいいオーナーふたりが造る、居心地のいい空間。
いつものシャツを着たままで、通える心地よさがいい。
そして何よりも、こういう本物の店があるからこそ、また佐久に行きたいと思う。

新型コロナウイルス感染症対策

  • ハンドサニタイザー

  • 客席を減らす・間仕切りあり

  • 換気

  • 店内の消毒

  • 手に触れる場所の消毒